「後でカツカレー食べさせてあげるから」
と母に言われ病院通いをしていた。
幼少の頃である。
小学校低学年の時、耳の病気で大学病院に通っていた。
病院嫌いだった私はほんの数分の治療にも恐怖を覚え、
泣きながら通院していた。
唯一の心の支えが、治療後、
大学病院の食堂で食べることができる「カツカレー」。
なんとも単純な私。
自宅でカレーを食べる時、福神漬けは茶色だった。食紅無し。
親が玄米好きだったため、お米は茶色だった。 ちょっと粘り気有り。
これが普通だと思っていた。
今思い返すと、実家の料理、母親はカツは作ってくれていたが
カレーと組み合わせることがなかったような気がする。
大学病院で初めてカツカレーを食べた時の驚き。
サクッと揚がったカツに、好物のカレーがトロっとかかり、
お米は白米!そして、なぜか福神漬けが赤い!
一口食べ、私にとってはゴチソウの部類に入ったのである。
……
今晩、たまたま入った店でカツカレーを食べた。550円。
懐かしさがこみあげ、幼少の頃を思い出したのである。
なぜか涙ぐんだ。
病院へ行く時、お母さんを怒らせた。
治療室へ入ったとき、すぐ終わるのに泣きだし、お母さんを呼びだした。
でも、カツカレーは一緒に美味しく食べた。
そんなことを想い出しながら食べてたら、無言でカツカレーを口に運んでた。
周りの音も聞こえなかった。
想い出と味覚だけしか意識がなかった。
美味しかった。
550円でもカツカレーはやっぱりゴチソウだった。
翠野桃